相続時精算課税制度のメリットデメリット | 大阪で相続の相談なら相続カフェ

相続時精算課税制度のメリットデメリット

相続を行うにあたって気がかりなものの一つが相続税になります。生前贈与しておけば相続税を下げられると思っている方もいるでしょうが、骨格としては相続税逃れが横行しないよう、生前贈与による贈与税のほうが不利になるような制度になっています。

 

一方で特例的には生前贈与を促す狙いのものもあり、その一つが相続時精算課税制度となります。

 

相続時精算課税制度の概要

|生前贈与を促す制度

制度の趣旨をごく簡単に言うと、相続すべき財産に対して、生前贈与を促すものです。この制度を使って生前贈与した財産は、相続税の申告の際に相続財産と同等の扱いがされます。

|2,500万円の贈与税非課税枠と計算例

通常は、年間110万円を超える贈与をすると、超えた分に対して贈与税がかかります。相続時精算課税制度を活用することにより、2,500万円までの贈与について非課税となります。

 

これは年間でなく、特定の贈与者から生涯を通じての枠となります。例えば父親・母親・子がいる世帯で、父親からの贈与財産には相続時精算課税を適用するとします。そして3年にわたり、父母両方から下記のような金額で贈与が行われるとします。

 

父親から 母親から
1年目 1,000万円 150万円
2年目 1,000万円 100万円
3年目 1,000万円 150万円

 

贈与税の計算は、下記の通りになります。

 

1年目:(150万円-110万円)×10% = 40万円

2年目:0円

3年目:(3,000万円-2,500万円)×20% + (150万円-110万円)×10%  = 100万円 + 40万円 = 140万円

                               

相続時精算課税制度の特定贈与者にあたる父親からの贈与財産に関しては、2,500万円を超える3年目から20%の税率で課税されます。2年目までは、2,500万円の枠内に収まるので課税されません。

 

相続時精算課税制度の特定贈与者にあたらない母親からの贈与財産に関しては、110万円を控除して贈与税を計算します。2年目は110万円を下回っているので課税されませんが、1年目は税率10%で課税され(控除後の財産価額に応じて税率は変わります)、3年目は父親の分と合算して贈与税を支払います。

 

|制度適用の手続き

手続きを適用する場合の最初の贈与税申告(申告期間は贈与した年の翌年2月1日~3月15日)で届出を税務署に出すことになります。上記の事例では、特定贈与者として父親の氏名を記入します。

 

また特定贈与者の要件として、(贈与を行う年の元日時点で)60歳以上の父母・祖父母という要件があります。本人には20歳以上という要件があります。

 

また相続時精算課税の特定贈与者から贈与財産があった場合は、非課税の枠内にあっても必ず申告することになります。例えば上記の計算例では、2年目の贈与税は0円ですが贈与税申告書は提出してください。

 

|相続税申告を行う際には

相続時精算課税というくらいですから、特定贈与者が亡くなり相続税申告を行う場合には、制度を適用して申告した贈与財産を考慮することになります。

 

例えば上記の計算例に関して、その後父親からは何の贈与も受けずに父親が死亡し、相続財産の総額が5,000万円、債務額は800万円であったとします。そして法定相続分どおり、母親と子が1/2ずつ相続したとします。

 

相続時精算課税制度を利用していなければ、この場合の相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×2=4,200万円ですので、課税遺産総額は5,000万円-800万円-4,200万円=0円となり、相続税はかかりません。

 

しかし3,000万円の贈与財産に関して、相続時精算課税を適用していますので、課税遺産総額は3,000万円なのです。

 

母親の課税価格は(5,000万円-800万円)÷2=2,100万円、子はここに3,000万円をプラスして5,100万円となりますので、比率は母親が0.29、子は0.71となります。

 

母親の相続税額は、3,000万円×0.29×10% =87万円 になります。

子の相続税額は、3,000万円×0.71×15% -50万円-100万円=169万5,000円 になります。

 

子に関しては、3年目の贈与の際に(父親からの贈与財産に係る)贈与税100万円分を控除しています。

 

複雑な計算ですが、贈与財産を相続財産に足して、20%の税率で払った贈与税額を差し引くという意味で「相続時精算課税」なのです。

 

相続時精算課税制度のメリット

|2,500万円まで一括贈与しても贈与税がかからない

上記の計算例は、3年にわたって贈与している例ですが、1年間で2,500万円の贈与を行ったとしても贈与税がかかりません。相続時精算課税を適用しない通常の暦年課税の場合は、(2,500万円-110万円)× 45% - 265万円= 810万5,000円と高額の贈与税がかかります。

 

1年でも何年かかけての贈与でも活用できますが、一括で贈与した場合のほうが通常の暦年課税と大きな差が生まれます。

 

|評価額が贈与時<相続時の場合は有利に

相続時精算課税制度を利用した際に相続財産に加算する贈与財産は、贈与時の価額です。贈与財産が不動産や上場株式である場合、相続時と贈与時は同じ額であるとは限りません。

 

近年のようにこうした財産が順調に値上がりしていく場合は、値上がりする前に生前贈与したほうが税金面でも有利になります。

 

相続時精算課税制度のデメリット

|土地贈与の場合、小規模宅地の特例が使えない

相続時精算課税を利用するにあたって、一番気をつけないといけないのがこの点です。

 

小規模宅地の特例とは、土地の相続税評価額を最大8割引き下げるための特例です。この特例を受けるためには、相続人に条件があります。

 

被相続人と同居している場合は、被相続人が死亡してその住み家を相続し、相続税の申告期限までずっと住み続けていることが条件です。

 

同居していない場合は、相続開始前3年以内に持家が無く(賃貸物件で暮らしている)、被相続人の住み家を相続して相続税の申告期限までずっと所有し続けていることが条件です。同居している場合と違って相続した不動産に住むことまでは要件となっていませんが、被相続人に配偶者がいたり、同居している法定相続人が他にいたりすると対象外になります。

 

例えば相続時精算課税の概要の事例で、父名義の持家があり、子は別居して賃貸物件で暮らしている場合を考えます。父が先に亡くなり子が父名義の持家を相続したとしても、母がまだ存命であればこの特例は活用できません。

 

また母が先に亡くなってから父が亡くなり、子が持家を相続した場合は、この特例が活用できます。ただ子には弟がいて、弟が実家に暮らしているようなケースはこの特例は活用できません。

 

どれだけ評価額が下がるかですが、上記の要件を満たす場合の相続土地は特定居住用宅地等といい、どのような広さであっても特例は活用できます。ただし330㎡までの部分について8割の評価減となっています。

 

もし父から相続した土地が330㎡以内で、原則的な相続税評価額が4,000万円であった場合、小規模宅地等の特例を活用すると800万円にまで下がります。

 

なお不動産が居住用でなく事務所として使っていたり、アパートのような貸付物件になっていたりする場合は、要件や評価額の下がり方は異なります。

 

もし相続を考えた場合に小規模宅地等の特例を活用できる余地があれば、不動産については相続時精算課税を使った贈与はしないほうがいいケースは多いと言えます。

 

|課税を相続時に繰り延べる制度であり、かつ物納の対象外

概要部分で相続税申告まで触れていますが、そこまで見据えてこの制度を活用することが重要です。贈与時には贈与税を支払わなくて良いかもしれませんが、その後相続となった場合に相続税を払うこともありうるからです。

 

相続税がかからないほどの財産しかない場合は、贈与税の節税になる場合もなります。ただどのケースでも節税になってお得だと決めつけず、あくまでも課税を先送りしていると考えてください。

 

また相続税がかかってくるケースで手元の資金で支払えない場合、一定の要件を満たした場合に物納が認められます。相続した物件などをもって、相続税の現金支払いに替えるというものです。

 

相続時精算課税対象の贈与財産は、相続税申告における相続財産に加算されますが、物納対象の財産としては認められていません。

 

|不動産取得税・登録免許税の税率が高い

これも小規模宅地等の特例と同様不動産の話になりますが、相続・贈与いずれにしても名義変更になるため、相続税・贈与税以外にも不動産取得税・登録免許税がかかってきます。

 

これらの税金は、相続と贈与では税率が異なります。まず不動産取得税は、相続においてはかかりませんが、贈与では課税されます。

 

登録免許税の税率も、相続では0.4%なのに対し、贈与では2.0%と相続時精算課税を活用したほうが損することになります。

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