今からできる相続対策!生前贈与の活用法
近頃、何かと話題の「相続対策」。相続税の非課税枠である基礎控除額が縮小され、課税対象となる方が増える、とされているためですね。
特別な富裕層にだけ関係のあるものではなく、都心にマイホームを持っているような家庭であれば、充分、相続税が発生する可能性はあります。
しかし、「じゃあ相続対策として、何をしておけばいいのか」というのは中々分かりづらいもの。今回は相続対策の代表とも言える、生前贈与の活用法についてポイントを解説します。
生前贈与とは。贈与税とは。相続税との関連は。考え方を理解しましょう。
生前贈与とは、読んで字のごとく、「生きているうちに財産を親から子などへあげること」です。
行為自体は簡単なものですが、自由に何の制約も無く、あげる、もらう、ができるのであれば、こんなにも相続対策などが話題になることはありません。
財産をもらった人に対して、「贈与税」という税金が課されます。「親から子へ財産を渡して、なぜ税金がかかるんだ」という感覚を持たれるのも分かります。
しかし、この制度を設けておかなければ、「相続税」というルールが成り立ちません。
生きているうちにどんどん財産を渡して、亡くなる際には非課税枠以下の財産だけ、としてしまうためですね。そのため、国は贈与という行為にも税金を課すことにより、相続税の課税を補完しているのです。
年間110万円までの贈与なら贈与税はかからない
一年間の間(その年の1月~12月の間)に贈与を受けた金額が110万円以内であるならば、贈与税はかかりません。
確定申告も不要です。暦年贈与の非課税枠とか、基礎控除枠、年110万の非課税枠、という呼称を聞いたことがある方もいらっしゃると思います。
ただし、この「年110万円」というのは、「贈与を受ける人一人当たり」の非課税枠ですので注意が必要です。つまり、父と母、それぞれから110万円ずつ子に贈与する。
これはダメです。贈与を受ける子は、110万円+110万円=220万円の贈与を受けているためですね。
贈与を成立させるには双方の認識が必要
「年110万円以内の贈与なら、贈与税はかからないんだな。よし、それじゃあ子に孫に、ひ孫に、みんなに毎年110万円ずつ渡していこう!」
はい、これもダメです。贈与という行為は、お互いに「あげました、もらいました」の認識があり、もらった側が、それを自ら管理し、自由に使えてこそ成立するものだからです。
小さい子供が、110万円を貰ったという認識があるでしょうか。まず、小さい子供に直接渡したりしませんよね。
子供名義の預金口座を作って、そこに入れておく、というのが通常かと思います。そして当然、子供にそれを自由に使わせたりはしないはずです。
「いや、直接渡したよ」「自由に使わせたよ」とかいう問題ではなく、未成年に対して大金を贈与する、という時点で、その行為そのものが調査の際に指摘される可能性があります。「毎年の常識的な額のお年玉を、子供名義の預金で積み立てていた」というのとは、訳が違います。
では、成人した子や孫に、年110万円ずつ渡していこう、としたときにも、注意が必要です。
上記の通り、単純に子や孫の預金口座を作って、そこにお金を移しているだけでは、「名義預金」に他ならず、親の死亡時には、相続財産として扱われ、相続税の課税対象となりかねません。
預金口座は、子や孫が自ら印鑑や通帳を管理し、いつでも引き出しができる状態にさせておくとともに、贈与契約書を毎年作成し、贈与が成立している証拠を残しておきましょう。
教育資金贈与の一括贈与特例を活用しよう
孫の入学祝いや、入学金そのものを祖父母が出す、ということは一般的なことであり、それが常識的な範囲である限り、贈与税が課税されることはありません。
「じゃあ別に特例じゃないじゃないか」と、この制度の概要を聞いて最初に思いがちなのですが、「一括で」教育資金の贈与ができる、という点が大きなメリットであり、特例なのです。
この制度は、祖父母から孫へ、というように直系尊属からの贈与で、教育に充てるための資金であれば、1,500万円までであれば贈与税が非課税となる制度です。
つまり、現在5歳の孫に、これから先、中学、高校、大学入学の資金として、1,500万円以内であれば「今、一括で」しかも非課税で渡すことができるということですね。これは大きなメリットです。
具体例を見てみましょう。現在1億円の財産を持っている祖父が、2人の孫に、これから先の教育資金として、1,500万円ずつ、計3,000万円を渡すとします。
その状態で相続を迎えると、相続財産は1億円-3,000万円=7,000万円です。この制度を利用しなかった場合には、相続財産は1億円のままですので、相続税の課税対象である相続財産が、3,000万円も違ってきますね。
それに伴い税金の額も大きく変わってくるので、この制度のメリットをお分かり頂けるかと思います。
この制度を利用する上で気をつけるべきポイントは、まず「教育に関する資金であること」。
教育に関する資金とは、どこまでを指すのでしょうか。これについては、①学校等へ直接支払われる入学金や授業料、②学校等以外の教育に関する資金で大別されており、①は小学校~大学、②は学習塾や、スポーツの習い事というイメージで捉えて頂ければ結構です。
そして②の用途での教育資金は、500万円までと上限が決まっています。
無尽蔵に非課税目的で習い事をさせることに歯止めを掛けているわけですが、500万円もあれば、一般的には成人するまでに充分な習い事ができますよね。
そしてもう一つのポイントは、「その贈与を受ける者が、30歳になるまでに使い切ること」です。
30歳を超えてから資格を取り始めることなどもあるでしょうが、その資金に充てることはできません。30歳の時点で使い切っていない場合には、その残額に対して贈与税が課されてしまいますので注意が必要です。
贈与税の配偶者控除 ~通称:おしどり贈与~ を活用しよう
贈与税の配偶者控除(以下、おしどり贈与)とは、夫婦間でのマイホームの贈与、又はマイホームの購入資金を贈与した場合に、2,000万円までは贈与税が非課税となる制度です。
長年連れ添った妻に対し、自宅の持分を分けることについて、妻の内助の功を考慮した制度ですが、妻から夫への贈与も可能です。適用には以下の要件を全て満たす必要があります。
(適用要件)
- 入籍してから20年以上経過していること
内縁の妻等、正式な婚姻関係でない、いわゆる事実婚の場合には認められません。
- 居住用不動産そのものか、その取得のための金銭であること
マイホームに関係のない財産はダメです。
- 贈与を受けた翌年3月15日までに住み、その後も住み続けること
もともと住んでいる自宅の贈与であれば関係ないですね。
- 過去にこの制度を利用したことがないこと
一生に一度の適用です。
- 贈与税の確定申告を行うこと
贈与税が発生しなくても、特例を受けるためには確定申告が必要です。
実はこの「おしどり贈与」については、税制上のメリットはそこまで大きいとは言えない、と言われることがあります。
なぜならば、相続が発生した際に、配偶者に対しては1億6千万円までの財産は相続税が非課税であるためです。
つまり、「生前に配偶者に渡しても、渡さなくても、配偶者に対しては相続税がかからない」というケースが殆どかと思います。
そのため、「配偶者への感謝の意」を表すものとして、マイホームの名義を一部付け替える、共有名義にする、という意義の方が大きいのかもしれません。
結婚・子育て資金の一括贈与特例を活用しよう
上述の教育資金贈与と同様に、結婚・子育て資金についても、両親や祖父母が幾らか援助する、というのは一般的なことであるため、教育資金贈与と同様の特例があります。
こちらの制度は、1,000万円が限度(結婚資金については300万円が限度)で、贈与を受ける子や孫は、20歳以上50歳未満であること、という条件があります。
また、制度を利用する上では「結婚資金」「子育て資金」とは何を指すのか?ということを理解しておく必要があります。
「結婚資金」とは、「結婚式や披露宴で通常かかる費用」というイメージで概ねOKです。
会場費、衣装代、引き出物代などですね。婚約指輪代や結婚指輪代は対象外です。また新婚旅行代も対象外です。
「え~!指輪代や旅行代、親に援助してもらうつもりだったのに・・・」という方もいらっしゃると思いますが、大丈夫です。
お忘れではないですか?年110万円の非課税枠を・・・。この特例の対象外のものについても、年110万円の基礎控除枠で結果的にカバーされているケースが大半ですので、大きく超えていないかのみ確認しておきましょう。
「子育て資金」とは、「妊娠・出産に係る費用」「子の医療費」「幼稚園の入園費用」というイメージで概ねOKです。
ただし、妊娠の治療や出産を、本人の希望で遠隔地や海外で行いたい場合の渡航費など、一般的に必須とは捉えられないものに係る費用は対象外です。
相続対策としての生前贈与にも様々な制度がありますが、まず基本は年間110万円以内の基礎控除です。
こちらを確実に行いながら、各種の特例を併用していくと、より有効に生前贈与を進めることができます。
各種の特例には細かい適用要件が設けられており、実は要件を満たしておらず、多額の贈与税が掛かってしまうリスクもあるため、税理士等の専門家に相談の上、慎重に進められることをおすすめします。
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