遺産分割調停の仕組みと実際について
人間の死亡によって発生する「相続」において、亡くなられた方の血縁関係者などの相続人が財産を相続する際に、「誰」が「何」を「どれくらい」取得するか相続人間で話し合いをすることで決定します。
これを「遺産分割協議」と言います。
財産については、当然不公平が生じないよう均等に分配すべきというのが一般的な考え方であり、公平に取得したいものです。
しかし、財産の取得については遺産分割協議によって決議される事ばかりではなく、人間の感情が入ってしまう場合があります。
そうなると話が前に進まずトラブルに発展してしまい、相続の手続き自体が止まってしまい、財産の取得を認められたことになりません。
このような場合に行われるのが「遺産分割調停」です。相続人だけでの遺産分割協議ではなく管轄の裁判所が間に入り、公平に客観視できる立場を設けることで、最も適切と判断される遺産分割へと誘導します。
遺産分割にルールはないの?
遺産分割協議において、被相続人の相続に関係する法定相続人に対しては「法定相続分」というルールが登場します。
これは民法で定められている法定の相続分になりますので、このルールに従った相続分については、最低限の保護をされることになります。
Aさんは財産をもらうが、Bさんは財産をもらうことができないということが発生しないように、決められたルールに沿って法定相続分が認められているのです。
どうして最初からルールで決めないの?
相続財産は亡くなられた方の想いや相続先の希望など、死後も財産についての所有権を尊重すべきという目的のもと保護されております。
人間が死を迎えた時、全ての相続財産が法律によって規制されコントロールされてしまったのでは、亡くなられた方の財産に対する所有権や自由を損害してしまうことになるため、あくまで相続人の話し合いが優先されています。
相続人間での遺産分割協議は民法に優先して認められる権利であり、本来持つべき財産権の尊重を第一に決議が完了しない場合には「法定相続分」に従って相続財産を取得する権利を主張できるという仕組みになっております。
遺産分割調停へ発展するケース 〜トラブル編〜
できれば避けたいところではありますが、相続は時に「争族」と表現されることもあり、金銭価値をもつ財産の発生には人間の感情や欲が働いてしまうケースがあります。
あるいは長い人生の中での疎遠となってしまった事実血縁関係者と遺産分割協議をする場合もあり、実際には会ったこともない方が相続人として登場せざるを得ない場合にトラブルへと発展するケースがあります。
その1争族の相続財産
いざ財産となると、人間の死とは無縁の感情が働いてしまうケースは少なくありません。遠方に住んでいる場合や、各種段取りや管理には関与していない場合などにおいても、相続財産はきっちり平等に分けるべきであるという意見が出た場合、不公平をきっかけにトラブルへと展開してしまうことがあります。
こうなると、話し合いでは解決できず「法定相続」というルールに従って相続を行うしか無くなってしまいます。「相続をきっかけに人が変わってしまった」あるいは「相続がきっかけで疎遠となってしまう」ということは、意外にも多いのが実際です。
その2会ったことのない相続人
自分は会ったこともない人間が「相続人」として登場するケースがあります。
「会ったことも話したこともないのに遺産分割協議には関係ない!」と割り切って話を進めたいところですが、法律は許してくれません。
亡くなられた方に先妻夫がいた場合で、その先妻夫との間に子供がいた場合は、その子供は「法定相続人」として認められます。
相続財産の遺産分割においては相続人として財産を取得する権利を有しているため、実質無関係となってしまった存在であっても「法定相続分」は認められます。
遺産分割調停の実際
遺産分割協議がまとまらないケースは様々であり、悲報にも親族同士で金銭トラブルなどから争いが発生することもありますが、相続財産については相続手続きを行わなければなりません。
こうした場合には遺産分割調停を避けられなくなります。まずは遺産分割調停についてポイントを整理しておきましょう。
まずは、調停によって何をどう決めるのかを知っておくことが必要になります。
これらの手続には相続の知識が必要になりますので、代理人として認められている「弁護士」などに相談する事例が多いです。
またはそのほかの専門家「司法書士」「税理士」などもそれぞれの役割分担がありますので、どの専門家がどのように役割を持つのかをよく理解した上で、事前に相談をするといいでしょう。
1、調停の手続きについて
まず初めに管轄裁判所に対して必要書類の提出が必要になるため、ここに不備があってはいけません。
必要書類を集めることが先決になります。ここで重要なことは、各種専門家への相談は可能ですが、実際に裁判が絡む場合には代理を許されているのは「弁護士」のみとなります。
2、必要書類の収集
亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本並びに法定相続人の現在戸籍一式による相続人関係証明情報が重要になります。
一つでも欠陥があると手続きは開始できず、不足分を請求する必要があります。これらは専門家に依頼することで職権を利用して収集してもらうことも可能です。
3、財産の特定
亡くなられた方の財産についての証明情報になります。
わかりきっているようで実は厄介なのがこの証明情報です。
ここでは「確か・・・多分・・・おそらく・・・」では財産を特定したと判断されません。
土地建物などの不動産については不動産登記簿謄本や固定資産税の納税通知書などから特定や算出ができます。
金融機関などについては、残された情報が頼りですので通帳やキャッシュカードがある場合は該当の金融機関へ、亡くなられた日付時点の残高証明発行を行うことで証明できます。(証券や株なども同じ要領で照会をかけます。)
財産を公式に証明できる情報の確保をしましょう。保険金などについては「満期金」などがある場合は注意が必要です。
受取人指定の保険金については、遺産分割には関与せず相続税のみの対象となります。
4、遺産分割調停の申し立て
情報が揃えば、あとは管轄の裁判所へ遺産分割調停申立書を提出します。
管轄の裁判所については亡くなられた方の最後の住所を管轄する裁判所になり、裁判所のホームページや直接聞くことも可能です。
5、裁判所へ出頭
調停の期日が確定したら、裁判所より相続人へ通知が届き1回目の話し合いが開始されます。
出頭した相続人及び裁判所の選任した調停委員を交えて協議が開始されます。ここで話が完結しない場合は後日再び出頭することもあります。
ポイント
1、遺言書がある場合は、遺言内容が優先となる場合がありますのであらかじめ存在の確認をしておきましょう。自筆証書と公正証書とでは手続きや必要書類も異なりますので注意が必要です。
2、司法書士は小額訴訟において簡易裁判の代理人を許されておりますが、家庭裁判所の家事審判の代理権はありません。ただし裁判所提出書類の作成を代行することができますので、事前情報収集や相続人特定なども踏まえて依頼を行うことが可能です。
3、税理士もまた「相続税」という分野に関係してくるため、財産が多い場合は後の相続税申告を踏まえて、事前に相談することも視野に考えておくと良いでしょう。
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