【音信不通】連絡を取ったことがない相続人がいる場合
相続事案では普段付き合いのない人とやり取りが必要になることもあるので非常に気を遣います。
遠縁の親戚や連絡方法が分からない人が利害関係者になることも往々にしてあるので気苦労が絶えません。
例えば遺産分割協議書を作成して遺産を分割しようという場合、権利者全員の合意を形成する必要があるので全ての権利者が署名押印をしなければなりません。
もしその場にいないから、連絡が取れないからといって一人でも欠けた協議書を作成したところで、その協議書は無効となってしまうのです。
そのため相続事案では被相続人の血縁関係者を調べる必要があり、その結果連絡を取ったことのない者と意思の疎通を行わなければならないことも出てきます。
今回は連絡を取ったことがない相続人がいる場合にどうすれば良いかを考えてみましょう。
■相手と接触できる場合は
連絡を取ったことがない相手と相続事案について話し合うのは少し緊張しますが、遺言書に連絡先が書いてあるなど連絡先が分かる場合は丁寧な手紙を書いて相手方に相続が発生した旨を伝えましょう。
電話番号が分かっているなら電話で連絡するのもありですが、おそらく電話をかける方も緊張してしまうのと、電話を受けた相手方もいきなり相続の話をされたのでは面喰って落ち着いた対応ができないからです。
まずは手紙で相続が起きた旨を伝え、遺産の分割について話し合いたいのですがお時間を頂戴したいということを伝えてみましょう。
手紙には連絡先として自方の電話番号を記載しても良いですし、加えてメールアドレスを記載しても良いでしょう。
手紙であれ電話であれメールであれ、相手から接触があれば話し合いの日時や場所などを詰めます。
相続では遺産を貰うことができるということで好意的に対応してくれる場合もありますが、権利関係が絡むため緊張してしまったり、不必要に警戒されてしまうこともあります。
相手との距離を徐々に縮めるようなスタンスで丁寧な接触を心がけるようにしましょう。
■相手の連絡先が分からない場合
相続人調査では被相続人の戸籍を辿って生存している子や親兄弟など相続人となり得る者が他いないかどうかを確認する作業が入ります。
戸籍調査の過程で権利者となり得る者がいた場合、その者の戸籍の附表を取り寄せましょう。
戸籍の附表にはその者の住所地の異動についての情報が記載されるので、連絡先を調べることができます。
相手の住所地が分かったら手紙を出して相続が起きたことを伝えますがこの時もやはり文言には気を遣います。
相手からするといきなりの話ですから心理的に拒否感を持たれることもあります。
最近は詐欺事件なども横行していますから下手をすると「新手の詐欺か」などと警戒されて連絡を拒まれるかもしれません。
正体が分からない相手から「遺産分割について話し合いたい」と来られると警戒してしまうのも仕方がないかもしれませんね。
もし可能であれば相続関係図などを手紙に同封すると、相手も自分の地位を目で確認することができるので事態を把握しやすくなります。
最初の接触の段階でいきなり遺産分割協議書への署名押印を求めるなどしてしまうと一気に嫌悪感を持たれてしまい、以後のやり取りに非協力的になってしまうことが予想されるので控えて下さい。
■連絡が取れない場合はどうする?
相手の連絡先が分からずどうしても接触できない場合はどうすれば良いでしょうか。
この場合であってもその者を抜きにした遺産分割協議書を作ることはできません。
それでは事態が進まないので、特別な手続きをして事を進める必要があります。
連絡が取れない者に代わって一時的に相続財産を管理する「不在者財産管理人」の選任手続きを家庭裁判所で行います。
不在者財産管理人とは何らかの財産の所有者が行方不明などで居所に戻ってくることが期待できない場合などに、その財産を管理するために設けられる管理人のことです。
相続事案以外でも債権回収などの事案で財産の所有者と連絡が取れない場合に利用されることがある法的な制度になります。
不在者財産管理人は自分で誰かにお願いするのではなく、必ず家庭裁判所で選任手続きを経ることが必要です。
相続事案の場合はさらにこの管理者に遺産分割協議に参加してもらわなければ話が進みませんが、権限の関係で管理者を立てただけでは分割協議には参加できません。
そのため家庭裁判所での管理人の選任手続きの際に「不在者財産管理人の権限外行為許可」の申立てを行っておきます。
こうすることで管理人は不在者に代わって遺産分割協議に参加することができます。
不在者に代わって参加することになるので、その者の利益を害さないように話し合いを行うことになります。
■失踪宣告を利用する方法
上記は相続する権利を持つ者が生きている仮定の話ですが、住民票など書類上は生存をうかがわせるものの、連絡しても音沙汰なし、実際に訪問したり捜索しても所在を突き止められず音信不通が何年も続いている場合にはすでに死亡していることも考えられます。
そのような場合には失踪宣告という制度を利用することもできます。
失踪宣告とは戦争や船舶の沈没、震災などが原因で生命の危機に会いその生死が1年間明らかでない時や、そのような特別な事態でなくとも7年間行方不明が続き生死が明らかでない時などに、法律上その者を死亡したとみなす制度です。
人を勝手に死亡したことにしてしまうということで重大な権利侵害につながる危険もあるため、こちらもやはり家庭裁判所での手続きが必要になります。
戦争などでない生死不明の場合には、最後の生存確認から起算して7年間を経た時点で死亡したという扱いになります。
死亡扱いになるため、その者に子がいる場合は代襲相続が発生することになるのでケースによってはなお波乱含みになる可能性を残します。
またもし後になって生存が発覚した場合は色々面倒なことになります。
実は失踪者が生きていて、後から「自分はまだ生きている」と失踪宣告を取り消す手続きをしてこれが認められた場合、すでに作成した遺産分割協議書は無効とはなりませんが、もし残っている遺産があった場合は原則としてこれを返還しなくてはならなくなります。
このようなこともあり失踪宣告は気軽に利用できるものではありませんが、場合によっては検討することもあります。
■専門家を利用するのが無難
色々見てきましたが、連絡を取ったことがない相続人がいる場合、第三者の専門家を利用するのが安心安全です。
連絡先が分かっているケースでも、それまで接触したことがない相手方にコンタクト取るのは緊張や拒否感を生んでしまうことが多く、話がこじれてしまう要因になります。
ここに例えば第三者の弁護士や顧問税理士などから第一報の連絡をしてもらうことで、間に人が入る分心理的な摩擦を抑えてスムーズに接触することが期待できます。
手間がかかる相続人調査(戸籍調査)では専門家を利用することも多いので、その場合は相手方への連絡第一報を代わってしてもらうようにお願いしてみましょう。
裁判所での手続きが必要になる不在者財産管理人の申立てや失踪宣告などは弁護士や司法書士が担当しますが、個別に依頼するよりも普段から顧問をお願いしている専門家を窓口にすれば連携している専門家が動いてくれるので、ワンストップで手間がかかりません。
手続き面だけでなく、遺産分配は利害が絡むので自分たちだけで処理してしまうと後から問題が持ち上がることも考えられます。
専門家をうまく活用して間違いの無い相続処理を目指したいものです。
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