相続税の申告と納付について
相続税という税目が疎まれやすいのは税金を取られるという単純な理由もありますが、制度や仕組みが分かりにくいというのが大きな理由です。
相続税は「申告」と「納付」という二つの作業に分かれますが、その両方必要な人と申告のみが必要な人、両方不要な人に分かれます。
所得税と同じように自己申告制を取る相続税は、申告と納付の必要性も自分で調べて判断するしかありません。
法律上必要な申告や納付を怠れば相続税法違反となり金銭的なペナルティを課せられることもありますし、場合によっては懲役刑に処せられることもあります。
意図した脱税ではなくとも税務署にとっては追加徴税などで多く徴税できるチャンスですから容赦してくれません。
そこで今回は相続税の申告と納付について詳しく見ていくことにしましょう。
■相続税の申告と納付が不要な人とは
まずは申告と納付が「絶対的に必要のない人」を確認してみましょう。
これに該当すればあなたは相続税の申告も納税も不要です。
相続税には基礎控除という枠があり、相続財産がこの額以内であれば課税額は0になるので納税が不要なのはもちろん、申告自体も不要になります。
近年この基礎控除枠が縮小され、税負担が発生する人が増えるとされています。
現在の枠は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」となっています。
例えば法定相続人が三人であれば4800万円までの相続財産であれば相続税の申告も納付も不要です。
相続税の難しいところは遺産をそのままの額で評価できないという所にもあります。
自分で正味の遺産以外の色々な数字を足したり引いたりする計算を強いられます。
相続財産の数値化や債務控除など足し引きの計算方法については別の章を参照してくださいね。
■相続税の納税が不要でも申告の義務がある人とは
では次に、相続税の納税は必要ないけれど申告自体は必要な人とはどういう人か見ていきます。
相続税の処理ではまず相続財産を全て数字に直すことから始まります。
財産を数値化して課税標準を定めないと税率をかけて税額を算出できないからです。
そして計算上、厳密には遺産でないものも色々と相続財産に加えたり、逆に控除したりする作業が入ります。
そこから上記の基礎控除額をさらに控除し、残った額に一定の税率をかけて税額を算出します。
さらにここから税額控除といって一定の額を算出された税額から引くことができる場合もありますが、税額控除を適用した結果税金額が0以下になった場合でも申告だけは必要なこともあるので注意が必要です。
またそれ以外にも税負担を軽減する特例を使って税額を0以下にした場合は例え納める税金の額が0でも申告だけは必要になります。
申告を怠るとただの申告漏れ扱いとなってしまうので要注意です。
例えば多くの人が使える大きな減税措置である「配偶者控除」や「小規模宅地の特例」などを利用した場合は例え税額が0になったとしても申告書の提出だけは必要になります。
■相続税の申告書の提出先は
相続税の申告先は原則として被相続人の生前の住所を管轄する税務署になります。
相続税は被相続人ではなく相続人に対してかけられるため、自分の住所に最寄りの税務署と勘違いする人が多いです。
遠方の実家で相続が発生した時にはその地元の税務署に対して申告しなければなりません。
例外として、被相続人が外国で死亡した場合の取扱いがあります。
アジア圏など生活費が安い海外で老後を過ごす方も増えていますから、この場合は取扱いが異なります。
まず、被相続人が海外で亡くなっても、その相続人が日本国内に居住していれば「居住無制限納税義務者」という扱いになります。
この場合は当該者の住所地の管轄税務署が申告先となります。
また、「非居住無制限納税義務者」という扱いもあり、相続発生時に日本国籍を有しておりながら日本国内には住所を有していない者などは住所地管轄がないので、改めて納税地を定めて申告しなければならないことになっています。
詳しくはこちらで確認できます。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4138_qa.htm
■相続税の納税が必要な人とは
相続税には様々な控除措置や特例が用意されていて、これらを利用することで計算上の税負担が0になる場合があります。
基本的な債務控除や基礎控除は誰でも使えますが、特例などは個々人によって使える人とそうでない人がいます。
こうした控除や特例を使って計算をしてもなお税負担が生じた場合には申告だけでなく納税も必要になります。
申告と納税の期限は同一で、相続発生の翌日から10か月以内となっています。
税の納付は税務署でも行えますが金融機関などでも可能です。
この期限を逸すると延滞税などペナルティが発生しますので注意してください。
納税は金銭で一括納付が必要ですが、遺産のほとんどが不動産などの場合は納税資金を用意することが難しいこともよくあります。
どうしても期限までに納付が難しい場合は延納や物納が認められることもあります。
■延納と物納の制度
延納とは分割払いの方法を用いて納税期限を伸長しながら少しずつ納める方法です。
物納は文字通り金銭以外の一定の財産でもって納税する方法をいいます。
どちらも必ず認められるというわけではなく、事情を説明してどうしても納税が難しいと税務署が判断した場合に限り認められるものです。
延納が認められるには納付額が10万円を超えること、一定の担保を提供することなど一定の条件を満たさなければなりません。
担保に供することが認められるのは国債や地方債、社債、土地や建物などに限られます。
延納制度を使うには利子税を納めることも要求されます。
相続財産に占める不動産の割合が大きいほど、納税資金を用意することが難しいと判断されて利子率や最長延納年数などの面で有利になる仕組みです。
ちなみに利子税は年一回の元金均等払によって納めます。
延納と物納には優先順位があり、最初から物納を検討することはできません。
まずは延納を検討し、それもダメな場合にのみ物納が検討されます。
物納できるのは被相続人が残した相続財産に限られ、相続人固有の財産は利用できません。
また国による利用を考えて、国内に存する財産しか利用できません。
物納に利用できるものは限られ、それらにも優先順位が設定されています。
まずは国債や地方債があれば最優先で利用されます。
それがなければ次は不動産や船舶、それもなければ社債や株式など、されにそれもない場合には動産も利用可能です。
ただし質権や抵当権の目的となっているものは利用できません。
物納では利用されるその物品をどうやって評価するかが問題となります。
金銭価値を判断しないと納税にならないからです。
これを「収納価額」といいますが、収納価額は相続が発生した際の相続税評価額となります。
相続税評価額というのは金銭以外のものについて、相続税の税額計算の為にその価値について判定したものです。
例えば不動産であれば、単に不動産屋の査定額が相続税評価額となるわけではありません。
国が定めた一定の評価法に従って算出されるもので、全国どこでも同じ基準で判断ができるように国がその評価法を定めています。
「財産評価基本通達」といって、相続税の計算の為に遺産を数値化するためのルールとして決められています。
これによって地域によって財産の評価にズレが生じて不公平感がでることなどを防ぐことができます。
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