相続人と相続分の関係
最近は人間関係が希薄になってきたため、親戚付き合いをあまりしないという方が増えているようです。
普段は余計な付き合いをしないことで余計なトラブルもまた避けることができるということもあるのかもしれませんね。
ただ人が一人死ぬということは、その方と関係する一定の血縁者は否応なく相続事件に巻き込まれるということになり、ここで近親者や普段付き合いの無い親せきとの揉め事に発展することもあります。
相続事件では関係する者同士は利害関係者となるので、余計な入れ知恵や虚偽のアドバイスなどが横行する可能性もあります。
自分の、あるいは自分の配偶者や味方の利益を増やそうと他者を陥れるような行為も起き得るのです。
ですから相続に関して正しい知識を持つことは自衛の面でとても大切です。
今回は相続が発生した際の相続人の種類や取り分について見ていきましょう。
■誰が相続人になる?相続人と法定相続人
たまに聞かれる質問として相続人と法定相続人は違うの?という疑問があります。
法定相続人というのは法律があらかじめ想定している相続人のことで、日本では民法という法律がこれについて規定しています。
法定相続人は複数想定されていますが、これらの者が全員必ず相続人となるわけではありません。
相続人となる権利はあるものの、具体的なケースに当てはめるとその権利を行使できる者は一部に限られてくるのです。
法が想定している相続人は以下の者です。
「配偶者」
被相続人と法律上の婚姻をした者です。内縁の妻など事実婚の相手方は対象外となります。
「子」
被相続人の血を継いだ子です。
「直系尊属」
被相続人の上の世代の親や祖父母などのことです。
「兄弟姉妹」
被相続人の兄弟姉妹を指します。
上記が基本的な法定相続人です。
このうち配偶者は生きてさえいれば必ず相続人となることができるのですが、それ以外の者等はそうではなく、優先順位があるのです。
基本的には上から順に「子」→「直系尊属」→「兄弟姉妹」の順に優先され、例えば子がいる場合は直系尊属と兄弟姉妹は相続権を持ちません。
被相続人に子がおらず、親も死亡している場合はすぐに兄弟姉妹にはいかず、その前に親の親、つまり祖父母がいればこの者が相続人となります。
年齢的には難しいかもしれませんが、直系尊属は生きていさえすればどんどん上の世代にさかのぼって相続人となります。
子も直系尊属もどちらもいないというときにようやく兄弟姉妹に順位が下りてくるという具合です。
優先順位があるこれらの者は配偶者も生きていれば両者が相続人となります。
ただし、この順位で注意しなければならないのが「代襲相続」という決まりです。
代襲とは本来の相続人が被相続人の死亡時にすでに死亡していた場合など、すぐに次の順位者に権利が移らず、その被代襲者の子が代わりに相続権を持てるというものです。
代襲が認められるのは子と兄弟姉妹のみです。
しかしこの両者には扱い上違いがあります。
子の方はもし死亡していてもその下の世代が生きていればどんどん代襲が続き(再代襲、再々代襲として)子の子、さらにその子と続いていきます。
しかし兄弟姉妹の方はその子までの一世代限りの代襲で終わりです。
それ以下になると血のつながりが薄くなるので法律は優遇しないのです。
さて、このようにして相続人が決まっていくのですが、ここで冒頭の疑問が解決します。
相続人とは、これら法定された相続人のうち実際に相続権を得た者のことです。
例えば配偶者と子、配偶者と直系尊属、あるいは兄弟姉妹だけということもあるでしょう。
ただし、上記は被相続人の遺志である遺言がなかった場合に備えて法律が用意した決まりであり、遺言がある場合は原則として遺言の内容が優先になります。
例えば配偶者と子、直系尊属、兄弟姉妹全員に何らかの財産を承継させたい場合はそれぞれに対象財産を相続させる旨の記載がされます。
この場合は故人の遺志により原則として上記の者が全員相続人となります。
遺言で相続人となることができても、自身の判断で相続放棄をすれば相続人とならないこともできます。
ということで遺言書がある場合でもない場合でも、相続人とは「結果として」相続権を行使できる人と言うことができますね。
■相続分の取り分はどれくらい?
上記の各相続人はどれくらいの取り分となるのでしょうか。
この点は遺言書がある場合と無い場合で扱いが変わります。
遺言書がある場合は故人の遺志が優先されるので、原則として遺言書の内容通りの取り分となります。
ただし、相続人は全員の合意の元で独自に取り分を変えることもできます。
あまりにも不合理な遺言が残された場合を想定して法律が認めているものですが、遺産について分割協議を行って合理的な分割内容を実現することができるのです。
協議がまとまったらその合意内容は書面の形にして残しますが、これを遺産分割協議書といいます。
当事者同士で協議がまとまっても、第三者はそれを目で見て確認することができません。
不動産の登記の際などに担当官に正式な権利者としての証明をしなければならず、そのような場面で遺産分割協議書は活躍してくれます。
ただし複数相続人のうち誰か一人でも反対すれば協議はできず、やはり遺言書の内容が優先されます。
では遺言書がない場合はどうなるでしょう。
この場合も法律は想定していて、各相続人の取り分(法定相続分)を決めています。
必ずしも法定分通りの分割にしなくとも、これを指標にして調整をした分割内容にしても構いません。
民法で法定された取り分は以下のようになっています。
・相続人が配偶者のみの場合・・配偶者が全額
・相続人が配偶者と子の場合・・配偶者が二分の一、子が二分の一
・相続人が配偶者と直系尊属の場合・・配偶者が三分の二、直系尊属が三分の一
・相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合・・配偶者が四分の三、兄弟姉妹が四分の一
このように、法定相続人は相続分についても優先度があり、配偶者と子が一番優遇されるような仕組みになっています。
ちなみに、子が複数いる場合、親などが両親とも生存している場合、兄弟姉妹が複数いる場合などはそれぞれは均等の取り分となります。
例えば被相続人の配偶者と子が二人相続人となる場合は配偶者が二分の一、二人の子はそれぞれ四分の一ずつの取り分となります。
■遺留分について
遺言がある場合は原則として遺言が優先されるとお話しましたが、中には全遺産を愛人に譲るなどの遺言が書かれることもあります。
こうした場合遺族があまりにもかわいそうですね。
そこで法は「遺留分」というものを用意していて、一定の法定相続人には最低限の取り分を確保することができるようにしています。
遺留分の権利があるのは配偶者と子、それに直系尊属のみです。つまり兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の取り分としては直系尊属のみが相続人となる場合は法定相続分の三分の一、それ以外の場合は法定相続分の二分の一となります。
ただし遺留分を確保できるのはあくまで当人がその遺留分の主張をした場合だけです。
この主張をしなければ遺留分があったとしても手元には入ってきません。
遺留分の主張は他の相続人等財産の承継を受けた者に対してしなければなりません。
主張の方法は口頭でも不可能ではありませんが、主張の証拠を残さなければ実質上の救済を受けられなくなる恐れがあるので内容証明郵便などを用いて「遺留分減殺請求」として行うのが普通です。
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