知っておきたい生前贈与の種類
生前贈与とは、生きているうちに自分の財産を第3者に譲り渡すことを言います。
生前におこなう取引なら個人の自由なのでは?と思ってしまいますが、それが許されてしまうと相続財産や相続手続きはもちろん、相続税なんてものを考える必要がなくなってしまいます。
なぜそれが許されてはいけないのか?それは、誰もが誰にでも自由に贈与をすることができてしまうと、「証拠」が残ることがないため、誰が何をもらったのかなど「所有権」が曖昧になってしまいます。生前に贈与する場合は「贈与」という形式をとって一定のルールを設けましょうということです。
あらかじめ生前に贈与をすることで、公式に財産の所有権を移転させ財産の持ち主を明確にすることで、トラブルのないよう財産を保護するための制度と言えます。
贈与の役割
相続財産は、相続の発生時の評価額を算出し、それに基づいて相続税の計算が行われます。
しかし、生前に所有している財産を第3者に贈与することで、所有権を移転させ自己の所有財産額を減らし、相続発生時の所有財産の額を減らし最終的な相続税を減額させることが可能です。
また、相続発生時の所有権についても相続財産としての取り扱いにはならないため、贈与対象者の財産については遺産の分割対象外となります。
贈与にはルールがありますので、贈与の手段などについてご紹介してゆきます。
贈与税の基本
ひとことに贈与といっても「いくらでも贈与していい」というわけではありません。
相続財産の課税を逃れることを目的に、多額の財産を隠蔽されてしまうなど操作をされてはいけないため、このような事態を防ぐべく一定の額を基礎控除額とし、それ以上の贈与については「贈与税」を課税するよう定めているのです。
また、贈与をしたという事実を残すことで、所有権の明確化はもちろん、公然に所有を許されるので主に相続に備えて、相続税の軽減や相続発生後の手続きの軽減化などを測るという目的が多く、こうした苦労を考える必要がなくなることも贈与のメリットになります。
また一方では、自分の財産を自分の思うように託したいという一心を尊重する意味での、財産権の自由を守ってくれる制度でもあります。
相続が発生すると相続財産として法定相続人の間での分割となりますが、贈与に関しては自分で決めることもでき、相続の財産ではなくなるため、自分の意思を保存することができます。
1、基本控除額
贈与税の基礎控除として、年間110万円の基礎控除が認められています。
つまり1年間を通じて贈与した財産の合計額が110万円を超えなければ税金は課税されません。
基礎控除についてはどなたでも適用の対象となりますので、適用条件はありません。また、年間を通じての閑散となりますので、1年が満了した時点で翌年には110万円の新規基礎控除枠が適用されます。
不動産などの名義が絡む問題となると、所有権の分割登記に費用がかかってしまいますので、どちらかというと預貯金などの現金価値の贈与が一般的になります。
2、配偶者控除
贈与の対象が配偶者の場合、生前贈与において配偶者控除が適用できる場合があります。配偶者控除は2000万円まで認められており、これと基礎控除を合わせると2110万円というのが実質の配偶者の認められる控除金額となります。
配偶者の一方から、居住用の不動産などを贈与を受けた際に配偶者を考慮するという考え方の元、設けられているのが配偶者控除です。
ただしこれには適用の条件があるので注意しましょう。
①婚姻期間が20年以上である
②過去に配偶者控除の適用を受けていない
③贈与財産が「居住用不動産」または「居住用の不動産の購入資金」のいずれかである
④贈与を受けた居住用不動産または購入した居住用不動産を住居として、継続的に居住すると見込みがある
⑤贈与税の申告をする
これらの条件を満たして、贈与税の配偶者控除を受けることができます。配偶者だから控除がある!安心!ではなく、あくまで手続きを行ってから初めて認められるということを知っておきましょう。
3、相続時精算課税
この制度は最終的には相続時に精算される課税制度であり、理解が必要です。控除額は2500万円であり、それ以上を超えた場合は一律20パーセントの贈与税が課せられてゆくという制度になります。
根本的な節税というよりは、生前に不動産の名義変更など、配偶者の負担を軽減するために贈与の形式にて手続きをおこない、相続発生時には税金の課税に従うというものです。
4、教育資金の一括贈与
教育資金の贈与には、子供一人当たり1500万円の控除枠が認められております。
条件としては父母または祖父母から30歳未満の子または孫に対して、「学校等に支払われる教育資金」または「学校等以外に支払われる教育資金」など「教育に関する資金」が適用条件になります。
学校以外の場合については500万円までとなります。
5、結婚・子育て資金の贈与
あまり聞くことがないかもしれませんが、結婚に伴い支払われる資金についても贈与の控除を受けることができます。控除額は1000万円と十分な金額で、結婚に伴い支払われる資金について、出産や育児などに必要となる資金についての贈与に対して控除が認められます。これは平成27年4月より平成31年3月31日までの間を対象期間としている制度になりますので、よく理解した上で活用しましょう。
このように様々な贈与がありますが、贈与を行うにあたっては「理解」が必要になりますので、契約書が必要になる場合や巨額の財産の贈与を検討している場合については、あらかじめ税理士などの専門家に相談をするなど対策が必要です。
意外な生前贈与方法?保険の活用編
近年では積み立て式の貯金という制度もあり、これは間接的な贈与として活用されている例があります。
それが「保険の活用」です。贈与という実感よりも実際には積み立ててゆくようなイメージとなります。
例えば、契約者が親であり、被保険者は子供で年間110万円の保険に加入したとすると、毎月の保険金額から積み立て分を貯金してゆき、満期を迎えると返還されるという制度です。
また、保険の活用方法として生前に多く加入することで、自分の相続の発生後に受取人に対して金銭的価値を残すという方法も注目が集まっております。
保険金にも生命保険の基礎控除枠(どのような保険でも控除される訳ではないので注意が必要です)があり、500万円x法定相続人の数となっております。
保険金は原則受取人が受け取りますが、控除額の計算については法定相続人の人数を換算しますので、実際にはもう少し多く枠を認められることが多いです。
贈与についてはこのように様々な控除があり、上手に活用することで贈与税をかけず相続に備えることもできます。
しかし控除枠の活用が全てでもないことを頭の隅に置いておいてください。
実際の生前相続対策と贈与税の基礎控除は別の知識であり、時には贈与税を払って一気に贈与をする場合や少額の贈与税を払って分割する贈与額を増やすことで最終的な税金面の減額へと繋がる場合もあり得るのです。
しかし、こうしたここの税金面の相談やアドバイスについては「税理士法」によって定められた資格所有者のみが許されているため、専門家への相談となります。控除枠を活用するばかりではなく「損して得取れ」とはよく言ったもので贈与のケースによっては、贈与税の方が結果的に安く収まる場合もあるのです。
相続コンテンツ一覧
- 生命保険を使った相続税対策
- 愛人、内縁の妻に財産を相続させたい!やっぱり本妻に財産を取られる?
- 相続についてのお尋ねが届いたら
- 遺言書のトラブルについて
- 相続人が未成年の場合はどうすればいいの?
- 相続時精算課税制度のメリットデメリット
- 相続の際にも使える!不動産売却の際に使える3,000万円控除
- 知っておきたい生前贈与の種類
- 〜知って得する!相続税の仕組み〜【養子にすると節税になる?】
- 遺産分割調停の仕組みと実際について
- 受取人を変えるだけで節税に?!「相続税と生命保険の関係について」
- お墓、仏壇を購入すると節税になる?!
- 知っておきたい新制度 ”法定相続証明情報制度” とは?
- 相続財産の整理ってどうすればいいの?
- これだけは知っておきたい!!相続がおこった時のマメ知識
- 遺言書の活用~メリット・デメリット~
- 隠れたリスクがいっぱい。相続した不動産を空き家にしておく危険性
- 『気付いた時にはもう遅い?相続の準備でやっておくべき事』
- 【音信不通】連絡を取ったことがない相続人がいる場合
- 【遺産の放棄はできる?】相続放棄についてまとめました。
- 【遺産相続】相続財産評価、現預金以外の評価について
- 相続税の申告と納付について
- 相続関連手続きスケジュール
- 相続人と相続分の関係
- 今からできる相続対策!生前贈与の活用法
- 子なし家庭が注意すべき相続の注意点6点
- 子供が結婚、家の面倒見てやるか・・親から子への住宅取得等資金贈与のポイント5つ
- 不動産を相続した時にするべき4つの手続き
- お得な生前贈与をフル活用して節税する
- 相続税申告の税理士報酬はいくらくらいかかる?【相場】
相続の相談なら、相続カフェ
お電話でもお気軽に御相談ください!
06-6940-6319
【予約制】平日 11:00-18:00 / 時間外・土日対応可能
