相続関連手続きスケジュール
相続事案の怖いところは前触れなしに訪れることが多いということです。
遺族となり得る方に医師が「いよいよ準備を」と病床で促すこともあるでしょうが、それも当日や前日であることが多いですね。
子どもが生まれる場合は出産時期などをあらかじめ予測できるので諸準備の対応がしやすいですが、人の死の場面は予測が難しく、精神的にも動揺してしまってしばらくは的確な行動がとれないこともあります。
そこで平素から相続がいざ起きた時にはどのような行動が必要になるのかを把握しておくことが大切になります。
今回は相続に関係する手続きと、その手続きにあたってどんな行動が必要になるのか考えてみましょう。
■7日以内には役所への死亡届を
相続は人が死亡することですからそのご遺体の処理を適切に行わなければなりません。
病院で死亡した場合でも自宅で看取った場合でも、必ず医師による死亡診断が必要です。
医師は死亡を確認すると死亡診断書を作成してくれます。
この死亡診断書は死亡届とセットになっており、半分を死亡診断書として医師が記入し、もう半分を遺族が必要事項を記入して地元の市区町村役場に死亡届として提出します。
すると役所からは火葬許可証が発行されますので、火葬場でご遺体の焼却ができるようになります。
火葬場では埋葬許可証が発行され、これをもって無事に埋葬ができますので、ご遺体の処理としては一件落着となります。
■3か月後に迫る限定承認または相続放棄の準備
一方、財産関係の問題は別に動かなければなりません。
相続の放棄や限定承認をするためには被相続人の死亡(相続発生)から3か月以内に家庭裁判所への申述が必要です。
相続の放棄は被相続人に借金など負債の方が多く、そのまま相続してしまうと相続人が借金の返済に追われることになる場合に「相続人となりません。なにも承継しません」ということです。
限定承認はプラスの財産の範囲でのみ借金などマイナスの財産の負担をまかなうことができるもので、放棄も限定承認も正しく手続きをしないと、単純承認といってプラスの財産もマイナスの財産も全て承継しなければなりません。
ですから隠れ借金がよくある自営業の方が亡くなった時は特に注意が必要です。
つまり単純承認して全ての遺産を承継しても問題ないのかどうかというのは自分で遺産の内容を詳しく調べてみないと分からないということです。
そのため財産関連の情報を自ら採集していく作業が必要になります。
また遺産の取り分は相続人の数にも影響されるので相続人の確定作業も同時進行で進めます。
遺産の情報は被相続人が残してくれる遺言書に多くの情報が書かれているのでまずは遺言書を捜索します。
被相続人が自筆で作成した自筆証書遺言は公正証書遺言と違って、家庭裁判所で偽造などの跡がないかどうかを調べる「検認」という作業が必要ですから勝手に開封せず、裁判所に持ち込んで手続きを取らなければなりません。
同時進行で相続人の調査も必要です。
被相続人の戸籍を辿り、その出生までさかのぼって関係する血縁者を探します。
引越しが多い方が亡くなった場合は複数の役所と何度かやり取りして手間と時間をかける必要が生じることもあります。
この作業は行政書士などの専門家に代行を頼むことができます。
戸籍情報の読み取りは素人では難しいこともあるので専門家を頼るのが面倒がなくて済みます。
特に電子化前の古い戸籍は筆跡の判別に非常に苦労することもあります。
遺産の種類や額の検証も並行して行います。
遺言書に書かれた現預金や不動産などの遺産だけでなく、借金についても調査して、それらを「財産目録」として一覧表にまとめます。
借金については遺言書に記載がないことも往々にしてあるので、督促状や支払通知書などを見つけたらその会社(金融機関など)に連絡を取って債務の状況を確認しなければなりません。
事業を行っていた方が亡くなった場合はこの債務調査を特に念入りにした方が良いです。
難しい場合は専門家に依頼すれば代行してくれます。
さてこのように相続人の人数を確定し、また遺産のプラスマイナスを確定すると自分がどれだけの遺産を承継できるのかが分かります。
ここまでやってようやく「承継しても問題ないか」が判別します。
問題がなければそのまま単純承認でOKですが、負債の方が大きくなる場合は相続放棄の手続きを取ります。
また何らかの要因で負債額の詳細が判別できない場合もあるでしょう。
その場合はしっかりと調査したうえで財産目録などの説明資料をそろえ、責任がプラスの財産の範囲に限定される限定承認の手続きをとることもできます。
ただしこの限定承認は実際の手続きがひどく煩雑で時間がかかることや、相続人全員の合意で行う必要があることから手続件数としては多くないのが実情です。
■4か月後に迫る準確定申告の準備
準確定申告とは被相続人のその年の収入について、相続人が代わって行う確定申告のことです。
たまに、相続税の確定申告と勘違いする方がいますが、これはあくまでも「被相続人の分の」収入について申告と納税を代わって行う作業になります。
年金だけで生活している方が亡くなった場合は特に手続きが要らないこともありますが、その場合でも年金の額が400万円を超える高額受給者である場合や、その他の収入がある場合は多くのケースで確定申告が必要です。
特に事業を行っていた方の場合はその事業に関係する帳簿などを採集して、経費処理なども行ったうえで税務署に対して申告と納税が必要です。
相続発生後4か月というのは余裕がありそうですぐに来てしまいますから速やかに準備に着手しましょう。
経理の担当者がいれば心強いですが、個人事業で従業員がいない場合などは事業所内を捜索して仕入れ表や納品書など関係書面の収集が必要になってきます。
経費処理などの計算が難しい場合税理士が代行してくれますので適宜利用しましょう。
■10か月後に迫る相続税の申告と納税
こちらが相続人の方自体にかかる相続税という税目の処理過程です。
相続税には基礎控除の枠があり、これ以下の遺産額であれば相続税はかかりません。
問題となるのはその遺産の評価額です。
相続税は課税対象となる財産に一定の税率をかけて税額を算出しなければなりません。
現金や預金はそのままの数字で良いのですが、不動産はどうでしょう?あるいは証券類は?
こういった財産は国が定める「財産評価基本通達」に則って一定の規則で評価を行い、遺産を数字化しなければならないのです。
従って被相続人が残してくれた遺産は全て相続税の計算の為に財産評価を行い数字化するという作業が必要になります。
素人では難しい場合は税理士に依頼しましょう。
また相続税は複数相続人がいる場合、個々人で計算して申告納税しなければなりません。
ですから自分がどれだけの財産を承継するのかといったことを確定しなければなりません。
そのためには他の相続人と協議を行ってその合意を書面化しておく必要があります。
遺言書があってその通りにする場合や相続人が一人だけの場合など遺産分割協議書が必要ないケースもありますが、複数相続人がいるケースでは多くの場合後でトラブルが生じないように合意書面として遺産分割協議書の作成を行います。
不動産については名義の変更が必要で、その登記の際には登記官が「確かにこの者に権利がある」と分かる資料としてこの遺産分割協議書の提出を求められることもあります。
このようにして、相続財産を数字化し、各相続人の取り分を確定すると、実際に自分がどの財産をどれくらい承継するのかが目で見て分かるようになります。
相続税の申告は相続開始から10か月以内にこれらの情報を基に税務署に対して申告納税手続きを行いますが、その申告先は被相続人が生前住んでいた住所を管轄する税務署です。
間違えやすいですが相続人の住所管轄ではないので注意してください。
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