生命保険金と相続
生命保険の加入率が8割を超える日本では、死亡保険金と相続は切っても切れない関係と言えます。
死亡保険金は「遺産」の一部だと考えられがちですが、実は原則として「遺産」にはあたりません。
故人が亡くなったことによってもらえるお金なので、感覚としては遺産のように感じますよね。
また税法上の計算では「遺産」と考えるので、誤解を招きやすいのかもしれません。
しかし保険金の出どころを考えてみると支払ったのは保険会社です。なので遺産ではないと考えるのが原則となっているんです。
この死亡保険金なかなか気が付きにくい問題が多くありますので”死亡保険金は遺産ではない”、”税法上は遺産と考える”と言う点を頭に入れておくと良いかもしれません。
死亡保険金は相続税の課税対象?
結論から言いますと課税対象になります。
民法上は亡くなった人の財産ではなく、死亡によって契約上受取人に指定された者が受取る固有の財産です。
しかし、相続税法上は、相続財産とみなして相続税を課すことにしています。そこでこれを「みなし相続財産」と呼んでいます。
しかし死亡保険金は非課税と言う話を、聞いた事がある人もいるかもしれません。
それはみなし相続財産は相続税を課せられますが、一定額までは、非課税財産として控除できますのでそのことを言っているのだと思います。
相続人が保険金を受け取る場合に限り、「500万円 × 法定相続人の人数」が非課税金額となります。
相続税対策でよく利用されますね。
死亡保険金は遺留分の対象となるか?特別受益の対象となるか?
遺留分とは
被相続人の兄弟や姉妹以外の相続人に対して最低限の遺産相続分を保証する相続割合のことを言います。
例えば、遺言書を作成して、「全ての財産を愛人に遺贈する」 や 「一人の相続人に全て相続させる」 とすることも出来ますが、そうすると相続人に不測の損害を与えるので少し返してくれと言うことが出来るんですね。そのことを遺留分といいます。
特別受益とは
簡単に説明すると、生前に贈与などを多く受けている人と受けていない人の間の不公平を調整する規定です。
相続財産の総額に生前贈与や遺言の対象財産も一度加え、 生前贈与や遺言で財産をもらった相続人は、 その分を相続したものとして計算します。
本題に戻りますが、これらの規定が死亡保険金に対して主張できるかがここでのテーマです。
原則死亡保険金は、遺留分、特別受益の対象とはなりません。
自分のものと思ってかまわないという事です。
しかし特別な事情(あまりに一方にとって不公平な場合)があれば特別受益に準ずる持ち戻しの対象となる判例もあります。
持ち戻しの対象となるのであれば、遺留分の対象にもなりえるという事です。
ですが基本的には対象とはならないとの理解でOKです。
以下判例です
【平成16年10月29日最高裁決定】
被相続人を保険契約者及び被保険者とし、共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産に当たらないが、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率、保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、特別受益に準じて持戻しの対象となる。
相続放棄しても死亡保険金は受け取れる?
ここまでしっかりと読んでいただけた方なら、もう答えはわかりますよね?(笑)
はいそうです。相続放棄しても死亡保険金はもらうことは出来ます。
親が借金しか残さなかったけど、保険金の受取人を自分にしてくれた、というような場合は、相続放棄した上で喜んでもらってください。
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